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zoom RSS NHK・BS「英雄たちの選択」 井上有一「噫横川国民学校」の書

<<   作成日時 : 2017/03/10 09:06   >>

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 昨日のNHK・BSの「英雄たちの選択」は、「昭和の選択」という事で、以下のような内容のものだった。
番組HPからコピー
『ピカソの「ゲルニカ」に匹敵すると評される書がある。書家・井上有一の「噫横川国民学校」。当時、国民学校の教師だった井上は、昭和20年3月の米軍による東京大空襲で教え子を亡くした。なぜ罪のない子どもたちは死ななければならなかったのか?井上は戦後、空襲の惨状の記憶を胸に秘めながら生き、そして33年後、悲劇の傑作を完成させる。番組では、井上が作品を生み出すまでの軌跡を追い、戦争の悲惨さと傷の深さを伝える。

【司会】磯田道史,渡邊佐和子,【出演】埼玉大学教授…一ノ瀬俊也,東京藝術大学 大学美術館館長…秋元雄史,明治大学教授…齋藤孝,【語り】松重豊』
という物だった。
 東京大空襲の日と言う事もあっての放送なのだろう。
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 私は、この『井上有一』という人の事は全く知らなかった。書家として世界的に知られていた人であり、小学校の教師でもあった人だという。
 昭和19年、当時20代後半の井上は東京都の墨田区にある横川国民学校の教師であり、クラスの6年生の男子と千葉県の富津へ学童疎開していた。井上は絵を志したが、教職に就き、時間が無いので書を始めた。苦しい疎開生活ではあるが、井上の若い気力と情熱で子供達と充実した時間を持っていたようだ。正月にクラス全員で、毎朝愛唱している詩(愛国の詩吟のようなもの)を一つの紙に全員で書初めした作品が今に残っていたが、とても皆一生懸命それぞれに個性的な字を書いて戦争中とは思えない一つの良い作品に出来ていて、良い教育をしているなあ〜、という感じのものだった。
 当時の6年生でこの疎開のクラスだった人の感想では、井上先生は押し付けないけど、しっかりやらせる、と言っていた。この横川国民学校は大正自由主義教育の流れもあり、そういった空気も吸っていたらしい井上は、愛国教師でありしっかりやらせるが、当時流行ったいわゆる軍隊的なスパルタ教育では無いものだったようだ。
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 疎開中の小学6年生の写真。中央の腕を組んでいる人が井上。

 昭和20年になり、6年生を卒業、進学させるために東京へ戻る事になった。下見で東京に戻った井上は、東京がすでにかなり空襲を受け、被害が出ている状態を見て、子供達を戻すべきでない、と思ったのだが、もちろん個人の考えでそんな事も出来る訳はなく、2月には子供達も連れて墨田区の学校へ戻る。
 そして3月10日の午前0時8分、宿直室に寝ていた井上は、その夜下町を襲った東京大空襲に会う。
 大勢の人が国民学校に避難してくるが、火が学校中を襲い、避難した人たちを次々に焼き殺した。井上は、倉庫に逃れるが、そこで何人かの人と共に煙に巻かれて意識を失う。翌日仲間に見つけられ、人工呼吸をされて蘇生する。九死に一生を得たのだが、炎に焼かれて死んでいく人々の断末魔の声を聞いたり、翌朝の瓦礫と焼け焦げた死体の印象は一生心に残った。
 連れ戻った教え子も何名かを失う。
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 空襲後、自らガリ版で作った文集が最近発見された。

 井上は戦後、神奈川県に移り、小学校教師を続ける、そして『書』に本格的に取り組む。戦後の新しい芸術の機運の中で、前衛的な絵画的な書にも取り組むが、また形のある字の方に戻ったりする。しだいに認められ、海外で高く評価されるような作品も生み出したりもした。とても力強い書と絵が融合したような作品であった。井上はユニークな教育も行い校長も勤めて退職する。
 そして、そこからが、本当に書に没頭したようだ。この「噫横川国民学校」という書は、その時代に書かれたものであり、ずっと心の奥にとどめていた思いを噴出させた作品であった。校舎での悲惨な様子が書で描かれている。それが漢文読み下し調のような中に肉声も入った「詩」であり、その「字」が表現ともなっている。
 
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 出演者の一人の斉藤孝は、明治大学の教職課程を教える中で、この作品を見せ、それを見ながら学生に音読させると、非常に何かを感じていくと語っていた。そういう授業を斉藤孝に受けると本当にそういった気持ちになるだろうな、という気がした。
 
 この番組を見て印象に残った事は、出演している人たちが皆、この井上の筋の通った生き方やこの書の表現を深く感じていて、それぞれの思いを『日本の今』と関わって述べている事を感じた事だ。
司会の磯田道史は、どこの国がやったとかいう事でなく、このような人々を殺戮するような事『戦争』は絶対に人間としてやってはいけない事であり、この井上の思いを後世に伝えていかねばならない。
 一ノ瀬俊也は、この時代は、「防空法」というものがあり、これは国民は空襲があったら消火に努めなければならない、逃げてはいけない、というもので、そういった事も被害を大きくしている。こういった極限の時代になるには、小さなそれまでの小さな一つ一つの積み重なりが、そういうものかな、とその流れに自分を合わせて行くうちに、そういった時代になってしまった。
 今の私達も小さな自己規制を積み重ねて大きな破局へと向かっているような気がしてしまう、というような意味の事を言っていた。

 折しも、今日のNEWS23を見ていたら、沖縄の基地反対のリーダーがすでに何か月も拘留されていて、国際的人権団体であるアムネスティーから懸念が出されている、というニュースが流れていて、これは見せしめのための政治的拘留に当たるだろうと元検察の人が言っていた。本当に、国民はボンヤリしていると戦前のように本当に恐ろしい国になってしまう。

 また、他のニュースでは籠池学園長が出てきて「教育勅語のどこが悪いんですか、ヘイトと言うが、私のは八紘一宇という考え方です。こういう教育に文句を言っているから日本国民は弱くなってしまう。」などと言っている様子が出てきた。
 この井上有一の番組を見た後で見ると、歴史の「レ」の字も知らないような、その薄っぺらな物言いに嫌悪感を感じるのだが、そういった人々が今、日本の権力の中枢や、その周辺にいるようになってしまっている現実に気が付くこの頃だ。

 野党の国会議員は、呑気に他所の国のミサイルに非難決議など出している場合では無い。
 自分の国が自ら戦前のような破局へと向かいつつある今、気楽すぎる。
 
 
 

 


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