今回の水害と山中教授の番組

 時間がたち、状況が詳しく分かるにつれて、長野県の東信地域、北信地域を中心に、部分的に中小河川の堤防決壊とか堤防や道路が崩れたり、浸水した場所などがたくさんあった事が地元紙で報じられている。

 色々な場所で、すごい量の水が流れた事が分かる。

 きっと、戦前や、さらに時代が下った江戸時代以前ならば、さらに何千というくらいの大勢の死者が出たような災害だったのかもしれない。それでも、ダムとか堤防などがある程度しっかり作られていたり、天気予報や避難情報など、様々な文明の進化によって人命が守られた事も確かなのだろう。堤防の内側など昔なら人のあまり住まなかった場所にも現在は人が暮らしている事を差し引いても、きっと死者の数は今回の方が少なかったのだろう。

 とは言え、この巨大台風そのものが人間の文明(科学技術)の発達による地球温暖化によって引き起こされた事を考えると、いちがいに手放しで科学技術の進歩を称賛する事はできない。

 昨晩、NHK・BS3 の「100年インタビュー」という番組で、IPS細胞を作りノーベル賞を受賞した山中伸弥教授のインタビュー番組を見た。
 教授が人間の皮膚からIPS細胞を作る方法を発見した時に、万能細胞のこれを使えば、IPS細胞はすべての細胞の元なので、精子や卵子も作る事が出来て、新しい生命を人工的に作ることも出来る訳で、本当に慎重に考えないといけないと思った。と語っていたが、それも科学の発展のスピードが速く、数年の間に、現実の問題として目の前に現れているのだという。

 教授の話では、100年前、ダーウインの進化論やメンデルの遺伝の法則が知られるようになり、その結果を元に、『優生学』というものが考えられ、ナチスがその優生思想を使った事や、最近まで日本でも法律となっていた「優生保護法」などが行われ、間違った道、不幸な道に人間を導いた反省があるのだが、現在の世の中でも、政治の世界では、そういった時代と同じようなポピュリズムが再び登場してきている。
 その状況を考えると、科学技術は進歩したと言っても、それを使う人間の叡智、といったものは、以前と変わらないのではないかと、教授は語っていた。

 現在の科学の急激な進歩と、政治や世相など人々の意識を見ると、今後、人間はどちらの方向に進んでいくのか、今が人間の未来の幸不幸の分水嶺にたっているのではないか、と教授は述べていた。
 政治の世界のポピュリズムを心配しているのは山中教授もやはり同じなのだなあ、と分かった。

 地球温暖化、核兵器、不老不死へのあくなき欲望、等々、ポピュリズムの政治や世相と結びつけば、映画や小説、マンガなどに描かれるSF的な荒野のような世界が現実の目の前に現れるのかもしれないし、逆に科学技術をうまく使い、環境を大切にした、人間の欲望も「足るを知る」ような、スエーデンの少女が訴えている事が、世界の人々の支持を得て、世界が変わり、現在よりもっと人々が幸福な世界になれるのかもしれないし、その分水嶺に今があるという事なのだろう。

 ちょうど、今回の水害のあった時に、山中教授のインタビューを聞いた事で、100年後の人類といった事についても考えていく事が重要なのだな、と気が付かされた。